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透析療法中でもお酒を飲んでもいいの?

食事指導を行っていると、血液透析など透析を行っている患者さんやそのご家族から、飲酒について相談を受けるケースが多くあるのではないでしょうか。今回のコラムでは透析療法中の患者さんがどのようにお酒と付き合っていけばいいのかをご紹介します。

透析療法とは?

はじめに透析療法について簡単に説明します。透析療法は低下した腎臓の機能を人工的に行う治療法で、方法としては大きく分けて血液透析と腹膜透析があります。治療においては、どちらの透析療法を行っているのか、透析療法の条件、残存する腎機能はどれくらいなのか、ということを踏まえた上で薬物療法と食事療法をあわせて行う必要があります。

腎機能が低下すると水分量の管理が必要

腎臓の代表的な機能のひとつに、体内の余分な水分を体外に尿として出す働きがあります。腎機能がほとんど働かなくなってしまった場合、尿が排泄されない、あるいは無尿となるため、摂取する水分量の管理が必要になります。そのため、お酒の量についても1日あたりの目標水分量に含めて抑える必要があります。

また、お酒に含まれるアルコールは肝臓で分解されるため、肝機能の状態や、他に合併症を持っているかなどの体の状態で飲酒の可否が分かれます。飲酒による血管の拡張作用は、血圧の変動に影響がありますので、血圧管理に苦労している方や、心疾患のある方はより注意を払う必要があります。また、アルコールと飲み合わせることで影響の出る薬剤は多数あります。患者さんが自分自身の体の状態をよく把握した上で、適量はどれくらいなのかを事前に主治医に確認してもらうようにしましょう。

知っておくと便利な、お酒を上手に楽しむコツ

お酒を上手に楽しんでいる患者さんに共通するのは、「今日はこれくらいの量までにしよう!」とアルコールの種類とおおよその目安量を決めていることです。血液検査のデータや、日々の体重管理をしていると、自分自身の適量がわかってくるようです。まずは患者さん自身に自分の体調を知ってもらうことが大切です。その他、真似できるポイントを3点ご紹介します。

①お酒も1日の水分量としてカウントする

透析患者さんの場合、腎機能が低下して尿量が減るか、無尿(ほとんど尿が出ない)のため、摂取した水分がそのまま体重として増加します。お酒の成分の7~9割程度は水分のため、摂取する飲酒量=水分量と考える必要があります。「透析患者の食事摂取基準」によると、1日の水分量の目安は、血液透析(週3回)を行っている患者さんでは「できるだけ少なく」、腹膜透析を行っている患者さんでは「腹膜透析による除水量+尿量」と記載されており、患者さんによって水分の目安量が決まっています。体格や透析条件により差がありますが、1日あたり500~1000mlの範囲内になることが多いようです。指示された水分量を再確認し、日ごろから患者さん自身に意識してもらうことが大切です。

水割りや果汁をしぼったカクテルは水分量が多くなるため、焼酎やウイスキーなどをストレートで飲むなど飲み方を変えてみることも、摂取水分量を減らすための良い提案になります。

②お酒に含まれるリンとカリウムをチェック

お酒の種類によって、リンやカリウムが含まれる場合もあります。患者さんがよく飲むお酒の種類について、下記の表をチェックしてみてください。

表:日本食品標準成分表(七訂)より作図
※1:厳密には1ml=1gではありませんが、今回は重量(g)にて算出したものをmlとして表記しています。
※2:糖質は、炭水化物から食物繊維総量を差し引いたものを表記しています。

また、お酒の種類や商品により含まれる栄養素の量が異なりますので、いつも同じ商品を飲んでいるという場合は、商品の成分表示を調べたり、メーカーに問い合わせてみたりするのもいいでしょう。メーカーサイトの問い合わせフォームや電話で問い合わせをすることで確認が可能です。管理栄養士に相談する患者さんも多くいらっしゃいますので、事前に調べておくと安心です。

③飲酒時は食事量も増えやすい

お酒を飲むと食欲が出やすく、おつまみや全体的な食事量が増えやすくなります。おつまみには味の濃いものが多く、食塩摂取量が増えやすくなります。また、塩辛いものを食べるとのどが渇き、体が塩分を薄めようとして、さらにお酒や飲料などの水分を摂取するという悪循環に陥りやすくなります。自宅では薄味の低塩おつまみを準備したり、お店では低塩メニューを選んだりなど「味方になるメニュー」を増やすなど患者さんに提案してください。

ここでご紹介したポイントなどを踏まえて、患者さんが無理なく安心してお酒を楽しむことができるように食事の指導を行いましょう。

参考文献:日本食品標準成分表(七訂)
慢性腎臓病患者に対する食事療法2014年版
URL:http://www.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf

 

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みんなのコメント( 1

    • ID: 324
      2551日前

      お酒好きな方にとっては量を調整するのは至難の技ですよね。

      拍手 5

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