大量調理のメニュー作成
大量調理では、対象者や調理設備によって対応できるメニューが変わってきます。また、いなり寿司やサンドイッチのように、仕込み・調理は簡単でも、盛付けに時間がかかり、食数によっては提供できない場合もあるでしょう。このようにメニュー作成では配膳までの工程を想定していきます。そういった意味では、各施設によって向くメニュー・向かないメニューは異なってきますが、ここでは老人介護保険施設での経験から感じた事をご紹介します。
大量調理に向くメニュー・向かないメニュー
温冷配膳車を使用する場合、変色しやすい食材を使うものは向かないメニューと言えるかもしれません。大葉・ねぎなどはどうしても保温中に変色しやすいため、いろどり用には変色しにくいインゲンやブロッコリーを使うとキレイです。パスタや焼きそばも保温中に乾燥してパサつきが出てしまうため、ナポリタンよりミートソース、ソース焼きそばよりも、あんかけ焼きそばの方が喜ばれる傾向があります。同様に焼き魚もパサつきが出やすいため、煮魚や揚げあんかけなどが保温機能を活かせるメニューです。
大量調理に向いているメニューとしては、カレーや筑前煮、さば味噌煮などの煮込み系は煮崩れなく柔らかく、うま味が増して美味しく仕上がります。
大量調理での失敗経験
以前、ハンバーグのオニオンソースを手づくりのおろし玉ねぎを使ったソースにしたのですが、家庭のフライパンでジュっと一気に加熱した時のような甘味と香ばしさが出ませんでした。100人分のおろし玉ねぎの量は鍋で加熱するしかなく、徐々に熱が入るためみぞれ煮のようになってしまい、思うような味にならなかったのです。それからは、食材の使用量をイメージして、使う調理器具のサイズまで考えて献立に組み込むようになりました。
また、バレンタインデーには喜んでもらえるようにと、ハート型に切り抜いたチーズをハンバーグに乗せてみたのですが、配膳車の中で溶けてしまいハート型が全くわからなくなった事もあります。型抜きにするならば、人参などの変形しない食材が向いています。
調理器具の便利な使い方
次に、普段とは少し違う調理器具の使い方についてご紹介します。
回転釜
回転釜が空いている時には、常にお湯を沸かしておくと、とても便利です。
禁食用の一人分の茹で物をする時や、煮物の水分調整、まな板やレードルを洗う時のちょっとした消毒、洗浄機で落ちなかった食器汚れの漬けおきなど、専用の柄杓などを用意し、回転釜からお湯をすくって使うと効率的です。床に油っぽいものをこぼしてしまった時にも、洗剤で擦る手間もなくすぐに落とせます。
スチコン
野菜をスチコンで蒸す時には、スチコン専用のトレイではなくザルを入れて調理すると、移し替える事なくそのまま「冷却→味付け→盛付け」と進めるため、洗い物が減り効率的です。また、家庭用のパウンドケーキ用の型も活用できます。
たとえば五目卵焼き(具材に肉入り)を調理する際、肉禁の方(約4~5人分)には、肉を抜いた卵焼きにする必要がありますが、ホテルパンで焼き上げようとすると、、量が少ないため、型が大き過ぎてしまいます。
この場合、肉禁の別調理用の型として、パウンドケーキ型を使うと人数・大きさともに調度よく便利です。
大量調理の現場では、発想次第でさまざまな工夫ができます。思考を柔軟にして常に、作業の効率化に努めたいですね。
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