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- 病気(症例別)と栄養
- 2025.07.04
痛風予防のための食事・運動~高尿酸血症とは?③~
高尿酸血症の管理には、服薬でコントロールすることも大切ですが、基盤となる食事や運動などの生活習慣改善も欠かせません。
最終回では、痛風予防のための食事と運動についてご紹介します。
痛風予防にもバランスのよい食事と適度な運動が大切です
高尿酸血症の主な症状として代表的なのが「痛風」ですが、痛風の発症を防ぐためには、適切な体重管理が大切です。多くの研究では、肥満と高尿酸血症の関係について、高血圧、糖代謝異常、脂質異常などのメタボリックシンドロームの構成要素の数が増えるほど、尿酸値は上昇することが示されています。逆に、減量により尿酸値が低下することも示されています。適正体重を維持するためにもバランスの良い食事と適度な運動が大切です。
メタボリックシンドロームと高尿酸血症が合併しやすい要因としては、以下のような理由が考えられています。
・高インスリン血症により、尿酸排泄低下を引き起こす
・食べすぎ飲みすぎによるエネルギーの過剰摂取が、尿酸産生過剰を引き起こす
・インスリン抵抗性による、尿酸産生過剰を引き起こす
・加糖飲料などに含まれる果糖の摂取過剰により、尿酸産生過剰を引き起こす
・飲酒習慣により、プリン体過剰摂取(尿酸産生過剰)と尿酸排泄低下を引き起こす
前回のコラムでもご紹介したように、高尿酸血症は、下図の3つのタイプに分けられます。食べすぎ、飲みすぎなどの習慣により、メタボリックシンドロームを発症すると尿酸の産生が過剰になったり、排泄されにくくなったりします。

痛風予防のための食事~5か条~
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① 主食・主菜・副菜がそろった食事を心がける
定食スタイルを基本とし、麺類や丼ものを選ぶ際は、具材や汁物を追加して主菜・副菜を補い、バランスの良い食事を心がけましょう。例えば、うどんにはきつねやわかめを、丼ものには具だくさんの汁物を添えるといった工夫で、糖質や脂質中心になりがちな単品の食事に不足しがちなたんぱく質やビタミン、ミネラルを補うことができます。 -
② 果糖をとりすぎない
甘い飲料やお菓子には果糖が多く含まれており、これらの過剰摂取は肥満の原因となるだけでなく、尿酸値を上昇させる可能性があります。一方、果物は果糖を含むものの、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富であり、一般的に摂取する量で痛風のリスクを上げることは考えにくく、一部の研究では果物の摂取が痛風リスクを下げる可能性も示されています。ただし、果糖を多く含む果物(例:りんご、マンゴー、ぶどう)を大量に摂取することや、ドライフルーツやシロップ漬けの果物を摂取することは、尿酸値の管理や痛風予防の観点から控えることが推奨されます。 -
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アルコールは適正量を守る
上述の通り、飲酒習慣はプリン体の過剰摂取につながりやすく、尿酸排泄低下を招きます。適正な飲酒量は、性別や体質、年齢により異なりますが、一般的には、純アルコール量※1として20g以内が目安とされています。
※1 純アルコール量:摂取量(ml)×アルコール濃度(度数%)/100×0.8(アルコールの比重) -
④ 水分は十分とる
尿酸を排泄するために、水分補給は大切です。
合併症の一つである尿路結石を予防するためには、尿量を1日2L以上に保つことが必要なので、こまめに水を飲むとよいでしょう。 -
⑤ プリン体を多くとりすぎない
表を見ると、野菜や全粒穀物、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐などがプリン体含有量も少なく推奨される食品であることが分かります。
これらの食品を多くとる食事をDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)と言いますが、高血圧を予防する食事として知られています。
最近では、尿酸値を低下させる食事としても推奨されています。
痛風予防のための運動
適正体重を保つためにも適度に身体を動かすことは大切です。
肥満を予防するためには、歩くなどの有酸素性運動と、筋トレのような無酸素性運動のどちらも実行することが理想ですが、高尿酸血症対策には、楽である~ややきついと感じる強度の有酸素性運動を10分位以上持続して行うことが推奨されています。
歩くだけでなく、軽いジョギングやサイクリング、社交ダンスなども有酸素性運動に含まれます。
一方、バーベルを持ち上げたりするような負荷の高い無酸素性運動は、尿酸値が上昇するため、推奨されません。
肥満予防のために筋トレをとりいれるなら、自重トレーニングのような負荷の軽いトレーニングがおすすめです。
まとめ
痛風予防のための食事、運動についてご紹介しました。
果物については賛否両論ありますが、健常者であれば1日200gとることが目標となっています。しかし、現状の摂取量は半分にも満たしておらず、糖尿病などを合併し、主治医から制限を受けている場合を除き、痛風予防のためにはむしろ適量を摂取するほうがよいでしょう。
参考文献
・日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改定委員会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 2022年追補版、診断と治療社(2022)
・市田公美 高尿酸血症とメタボリックシンドローム 日薬理誌、2010
、136、321~324
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/136/6/136_6_321/_pdf/-char/ja (閲覧日:2025年3月)
・厚生労働省 令和5年国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf (閲覧日:2025年4月)
・Choi HK, Curhan G., "Soft drinks, fructose consumption, and the risk
of gout in men: prospective cohort study." BMJ (2008) ・Huang HY, et
al.. "The effects of vitamin C supplementation on serum concentrations
of uric acid: results of a randomized controlled trial." Arthritis &
Rheumatism (2005)
・Choi HK, et al. "Fructose-rich beverages and risk of gout in women."
JAMA(2010)
みんなのコメント( 1 )
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- Eatreat 編集部
- 3時間前
高尿酸血症シリーズの最終回、痛風予防のための食事と運動についてです。
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WRITER
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松岡 喜美子
循環器病予防療養指導士 かがわ糖尿病療養指導士,ベーシックインストラクター(JCCA)、貯筋運動指導者、歯科栄養アドバイザー2級 大学卒業後、糖尿病クリニックでの栄養指導に従事しながら健康運動指導士を取得。 2008年よりフリーとしての活動を開始。 特定保健指導の立ち上げからスタッフ育成などにも携わり、これまでの指導件数は1万件以上。 生活習慣病予防セミナーの講師や企業やスポーツクラブでの運動指導なども行っている。 その他、企業HPのコラム執筆なども担当し、健康情報の発信や商品マーケティングなども行っている。 「栄養不良の二重負荷」という問題に対して、世界に貢献できる管理栄養士を目指しています。
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