COLUMN

妊娠中の食生活のポイント

妊娠中はつわりがひどく、思うように食事ができなかったり、逆に食欲旺盛で食べすぎてしまったり、特定の食品に偏ってしまったりと、普段の生活以上にバランスの取れた食事が困難になります。今回は妊娠中の食事のポイントをご紹介します。

普段の食事でもいえることですが、食べ方のコツをつかむと、自然と栄養のバランスもとれてきます。まずは、日常生活で取り入れやすいポイントからご紹介します。

妊娠中の食べ過ぎを防ぐには

早食いは食べ過ぎのもとになります。ゆっくりよく噛んで、腹八分目をこころがけましょう。よく噛んで食べると、少ない食事量でも満腹感を得やすくなります。

食べ過ぎを防ぐためには、食べる順番も重要です。野菜やきのこ類などエネルギーの低いおかずから食べはじめましょう。野菜やキノコを先に食べることで、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。また、食物繊維を多く含んでいるため、満腹感を得やすくなります。

食欲旺盛な時は、エネルギーの摂取過剰だけではなく、食塩の摂りすぎにも注意しましょう。塩分の摂りすぎは妊娠高血圧症候群やむくみの原因にもなります。薄味の習慣は、妊娠中だけでなく、一生の財産になります。食卓の上に調味料を常備しないよう心がけましょう。

つわりがひどく、食べられないときには

つわりがひどく、思うように食事ができないときには、無理せず、小分けにして食べましょう。ただし、脱水症状にならないように、水分だけは意識して補給しましょう。

ひとつの食品しか食べられないときは、偏食は気にせず食べられるものを食べてください。その代わりに、つわりが終わったら、まんべんなく食べるようにしましょう。おう吐が続くときには、必ず主治医のもとに相談して下さい。

間食には果物や牛乳、ヨーグルトがおすすめです。市販品の菓子類は、糖分と食塩量の摂りすぎに注意が必要です。パッケージの栄養表示を確認するなど、意識することが大事です。間食は、食事のリズムを崩さないためにも、だらだら食べるのは避けましょう。1日に食べる回数と、時間を決めておくことをおすすめします。

外食や中食の注意点は

外食をする際には、単品料理より、主食と主菜が分かれているメニューを選ぶといいでしょう。栄養表示を確認して、主食量や食塩量の調整をするのもおすすめです。料理が全体的に茶色っぽい時には、野菜や果物を添えて、彩りを足すことを意識するだけでも、栄養のバランスはよくなります。

ドレッシングなどの調味料やトッピングなどは、注文時にお願いすれば、別盛りや、抜いてもらえる場合もあります。ちょっとしたひと工夫ではありますが、食べ過ぎや栄養の摂りすぎを防ぐことができるため、外食や中食で食べられるものの選択肢も広がります。

妊娠中のサプリメント

妊娠中は思うように食事ができないため、サプリメントに頼らなければならない場合もあります。しかし、サプリメントは過剰摂取による副作用のリスクもあります。自己判断は避け、必ず主治医の指示に基づいて服用しましょう。

料理ができないときには

料理をする時間がない、または料理のにおいをかぐのがつらく、料理ができないときには、市販の食品をうまく活用しましょう。水煮や蒸し大豆、乾燥野菜などの食品を活用すれば、加熱の時間が短縮でき、味付けでバリエーションを増やすことができます。「食塩無添加」のものを選ぶのもポイントです。栄養表示や原材料は意識して確認してみて下さい。

時間がない朝食時は、ワンディッシュでも食べることが大切です。ただし、主食、たんぱく質、野菜は確保しましょう。

何をどれだけ食べるかも大切なことですが、まずは、朝、決まった時間に起きて、朝ご飯を食べることからはじめてください。これは妊娠中に限らず、老若男女、共通した正しい生活習慣の第一歩です。

妊娠中の食事は気をつけることが多く、おぼえることも多くて大変! そう思うとなんだか不安な気持ちになってしまうかもしれません。しかし、これからいろんなことをおぼえなければいけない子どもたちの目はいつもキラキラしています。子どもは、見て、聞いて、さわって、短期間でいろんなことを覚えます。覚えることがすべて、はじめてだから、子どもの目はキラキラと輝いているのです。

大人になると、知っていることばかりになるので、目を輝かせて新しいことを学ぶ機会も少なくなります。そう考えると、妊娠は新しいことを学ぶチャンスかもしれません。最初は大丈夫かな?と少し不安な気持ちになりますが、きっとあなたの目も次第にキラキラと輝いてくると思いますよ。

参考文献
日本栄養士会雑誌 第60巻 日本栄養士会 2017
妊娠中のおいしい食事と栄養 田中守・牧野直子 ナツメ社 2013
赤ちゃんすくすく時期別妊娠中の食事 笠井靖代・佐藤真之介 西東社 2016

科学的根拠に基づく糖尿病治療ガイドライン2013 南江堂
妊娠糖尿病の定義と診断基準 日本産科婦人科学会、日本糖尿病・妊娠学会
糖尿病治療ガイドライン 2014-2015 日本糖尿病学会編
糖尿病ライブラリー 糖尿病と妊娠 アークレイ 2013
妊娠中の食事 細川モモ・宇野 薫 主婦の友社 2016
赤ちゃんすくすく時期別妊娠中の食事 笠井靖代・佐藤真之介 西東社 2016
妊娠&授乳中のごはん150-おいしい症状別レシピ- 岡本正子 日東書院 2009

 

おすすめコラム
妊娠中に注意したい魚介類の水銀①
妊娠中に注意したい食中毒①〜リステリアを知っていますか?〜
妊娠中に注意したい食中毒②〜リステリア感染の予防法〜
妊娠中に無理なく摂りたい栄養素・鉄分
妊娠中に無理なく摂りたい栄養素・葉酸①

みんなのコメント( 1

    • ID: 361
      2753日前

      サプリメントの過剰摂取による副作用のリスクって怖いですね。

"妊娠中に注意したい食事"のバックナンバー

もっと見る

WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

小山 幸子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"妊娠・出産・育児"に関するコラム

もっと見る