2019年に改訂された授乳・離乳の支援ガイドでは、災害時の栄養に関して、災害時と平時の支援におけるポイントや事例が盛り込まれました。いざという時に備えるための要点を解説しています。前編はこちら。
平時にできる「備え」と「試み」
皆さんは、自分の住んでいる地域の防災体制はご存知ですか? 地域防災計画と検索すると、各地域の備蓄リストを確認することができます。備蓄リストには多くの種類の食品がありますが、乳児用粉ミルクやベビーフードの備蓄は、充実しているとは言い難い現状です。
各避難所に、赤ちゃんに必要な食品が備蓄されているとは限らないため、家庭でできる範囲で備蓄をし、実際に食べてみるなどの準備をしておくことをお勧めします。昨年、厚生労働省からも、災害時における授乳の支援と母子に必要となる物資の備蓄及び活用が発信されたため、備蓄品の予算が組まれる流れがあります。三重県ではいち早く、2019年より広域防災全拠点に液体ミルクの備蓄をしたという実例もあります。
また最近では、ポリ袋に食材を入れて湯せんで火を通すパッククッキングを利用した防災食教室なども開催されています。少ない調理器具や資源で作れるパッククッキングは、普段でも離乳食に活用できるアイデアなので試してみてはいかがでしょうか。
特殊栄養食品ステーションの設置の動き
避難所の運営は行政主導で行われます。災害時に必要な人に、必要な物資の配布と物資の活用法を助言できる環境を整えておくことが、スピーディーな支援につながります。しかし、現実は、物資の数が全員分揃わないと被災者の手に届けられないというジレンマがあります。被災者が平等に栄養摂取をできるためには、支援物資の内容を確認し、栄養や食べさせ方の知識が必要となりますが、全ての避難所に栄養士がいるわけではありません。そこで日本栄養士会では、災害支援チーム(JDA-DAT)を中心に特殊栄養食品ステーションを設置しており、被災自治体と連携して被害が大きい地域にはサテライトも設置しています。要配慮者に必要な物資を届けるために一度集約したターミナルを作り、そこからサテライトを通じて、要配慮者へ配布をする支援があることも知っておくとよいですね。
参考文献
『赤ちゃん防災プロジェクト』が始動!日本栄養士会災害支援チーム/日本栄養士会HP
https://www.dietitian.or.jp/news/information/2018/164.html
避難生活で母子に生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/boshi_pro.pdf
※1赤ちゃん防災プロジェクト災害時における乳幼児の栄養指導の手引きより
https://www.dietitian.or.jp/news/upload/images/aec041f33071d6c0a7b768074ebeb34cf966e0cc.pdf
※2災害時に乳幼児を守るための栄養ハンドブック(2019年4月)
https://www.dietitian.or.jp/news/upload/images/38b6b832444fbf45e58316b947b4b30d9a448c29.pdf#search=%27災害時に乳幼児を守るための栄養ハンドブック%27
※3要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook/pdf/need_consideration_stockguide.pdf
※4災害時における授乳の支援並びに母子に必要となる物資の備蓄及び活用について
http://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/siryo_46.pdf
※5三重県初めて液体ミルク備蓄へ
https://www.isenp.co.jp/2019/07/19/34237/
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