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- 病気(症例別)と栄養
- 2024.11.22
中性脂肪が高いとどうなる!?~脂質異常症とは?③~
管理栄養士・栄養士は、健康診断などで「中性脂肪が高い」と指摘を受けた方の食事指導に関わることも多いと思います。血液中の「中性脂肪が高い」とはどういうことなのでしょうか?
今回は、脂質異常症の指標の一つでもある高脂血症(高トリグリセライド血症)についてお伝えします。
中性脂肪(トリグリセライド)の役割とは?
中性脂肪は、肉や魚・食用油などの食品に含まれる脂質や、体脂肪の大部分を占める脂質の一つです。中性脂肪は「1g=9kcal」であり、他の3大栄養素(糖質・たんぱく質:1g=4kcal)と比較してもエネルギーが高く、生命維持に欠かせない重要なエネルギー源になります。
しかし、とりすぎて過剰になると体脂肪として蓄えられ、肥満や脂質異常を引き起こします。
中性脂肪が上がる理由とは?
中性脂肪は、エネルギー摂取過剰、アルコールや糖質(特に単純糖質)過多、脂肪の量と質により上がります。脂肪の量と質については、最終回「食事療法」でお伝えしたいと思います。また、運動不足や喫煙、加齢なども中性脂肪を上げる要因となります。
中性脂肪が高い状態とは、カイロミクロン(CM)やVLDLが過剰に蓄積された状態を言います。これらのリポタンパク質は、体内で脂肪を運ぶ役割を持っていますが、過剰になると脂質代謝に悪影響を及ぼし間接的に動脈硬化を促進する要因となります。
カイロミクロン(CM):小腸から吸収した脂質(主に中性脂肪)を、肝臓に向けて運搬します。
カイロミクロンレムナント:カイロミクロンの中性脂肪が分解されて小型化し、コレステロールの比率が増えた状態です。血管壁の内側に入り込みやすく動脈硬化を引き起こす要因となります。
VLDL:肝臓で合成された脂質(中性脂肪とコレステロール)を、脂肪組織などに運びます。
VLDLレムナント(IDL):VLDLが分解されてできたもので、中性脂肪の割合が減った状態です。血管壁の内側に入り込みやすく、動脈硬化を引き起こす要因となります。
LDL(低密度リポタンパク;Low-Density Lipoprotein)コレステロール:肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割を持ちます。しかし、血液中に過剰に増えると動脈硬化の原因となります。これが「悪玉コレステロール」と呼ばれる理由です。(LDLコレステロール)
HDL(高密度リポタンパク;High-Density Lipoprotein)コレステロール:体内で余分なコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ役割を持つ最も小さいリポタンパクです。(HDLコレステロール)
中性脂肪が高いとどうなるの?
中性脂肪が増えすぎると、カイロミクロンやVLDLが増え、間接的に動脈硬化を促進する要因となります。4回目のコラムで詳しくお伝えしますが、LDLは大型と小型に分けられ、中でも小型LDL(small dense
LDL)は、「超悪玉コレステロール」とも呼ばれ、通常の大型LDLよりも動脈硬化を強く進行させると考えられています。
この小型LDLは、血液中の中性脂肪が高いほど多く作られることがわかっています。
食後に中性脂肪が上がる「食後高脂血症」にも注意
令和6年4月より施行された「第4期特定健康診査・特定保健指導」では、中性脂肪の保健指導判定に随時採血の値が追加されました。
<中性脂肪(TG)の判定値>
●空腹時中性脂肪※1:150 mg/dⅬ以上
(やむを得ない場合は、随時中性脂肪※2:175 mg/dⅬ以上)
※1 絶食10時間以上
※2 食直後(食事開始時から3.5時間未満)を除く
これは、5年ぶりに改訂された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』の主な改定点の一つで、随時(非空腹時)の中性脂肪値の基準値が新たに設定されたことに基づいています。
中性脂肪は食事の影響を受けやすく、測定するタイミングにより個人差が生じます。空腹時の中性脂肪が低くても、随時(非空腹時)中性脂肪が高いと、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが高まることがわかってきました。
このことからも、食後高脂血症は、動脈硬化性疾患の発症リスクを上げる可能性が示唆されています。
まとめ
これまで、脂質異常の基準値として空腹時の中性脂肪が用いられていましたが、食事の影響を受けやすいため、非空腹時の中性脂肪も疾病予防のための重要な指標として捉えられるようになりました。。 次回は「コレステロール」についてお伝えします。
参考文献
・厚生労働省 e-ヘルスネット 中性脂肪 トリグリセリド
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-045.html
・増田大作:食後高脂血症の意義と日常診療への活用 『日内会誌』、2017年 第106巻:702~710
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/4/106_702/_pdf
・一般社団法人 日本動脈硬化学会:「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」、(2023年)
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・脂質異常症になりにくい食事の工夫①
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WRITER
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松岡 喜美子
循環器病予防療養指導士 かがわ糖尿病療養指導士,ベーシックインストラクター(JCCA)、貯筋運動指導者、歯科栄養アドバイザー2級 大学卒業後、糖尿病クリニックでの栄養指導に従事しながら健康運動指導士を取得。 2008年よりフリーとしての活動を開始。 特定保健指導の立ち上げからスタッフ育成などにも携わり、これまでの指導件数は1万件以上。 生活習慣病予防セミナーの講師や企業やスポーツクラブでの運動指導なども行っている。 その他、企業HPのコラム執筆なども担当し、健康情報の発信や商品マーケティングなども行っている。 「栄養不良の二重負荷」という問題に対して、世界に貢献できる管理栄養士を目指しています。 ★2023年7月~ 訪問栄養指導をスタートしました。 プラダ―ウィリー症候群(PWS)の症例に関わられたご経験がある方、情報共有できたらうれしいです。
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