COLUMN

糖尿病とは?

糖尿病とは、インスリンというホルモンがうまく働かなくなり、血液中のブドウ糖がいつも多い状態となる病気のことです。インスリンはすい臓のランゲルハンス島のβ細胞で作られ、肝臓・筋肉・脂肪細胞などに働きかけて血糖値を低下させる働きがあります。

糖尿病は肥満の方に多いと思われがちですが、日本では、患者さんのBMI平均が25弱で、肥満の一歩手前の体型の方に多いようです。欧米人は遺伝的にインスリン分泌能力が高いため、少し太ったぐらいでは糖尿病になりません。ところが日本人や東アジア人は、インスリン分泌能力が低いため、肥満でなくても糖尿病になりやすいのです。20歳の時に比べ、10kg以上体重増加が見られる方は、危険信号と考えられます。

糖尿病の種類

糖尿病は大きく分けて、1型、2型、妊娠糖尿病、その他の糖尿病の4種類に分けられます。

1型糖尿病は、β細胞の機能がもともと低いか、なんらかの原因で壊れてしまい、インスリンがほとんど分泌されなくなることで起こる糖尿病です。子どもを含む若年者に多く、原因が解明されていませんが、自己免疫反応によって起こるといわれています。自己免疫反応とは、外から侵入した異物を排除する免疫機能が壊れてしまい、自分の細胞を攻撃してしまう現象です。1型糖尿病の場合は、免疫機能がβ細胞を攻撃してしまうことが原因で発症すると考えられています。この1型糖尿病には、急に発症する劇症1型と、歳月をかけて発症する緩徐進行1型があります。

2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて、過食・運動不足・肥満・ストレスや加齢などの要因によって、インスリンの働きが悪くなったり、インスリンの分泌量が少なくなったりすることで起こります。日本人の糖尿病の約90%が2型糖尿病です。2型糖尿病は、生活習慣を見直すことで、進行を遅らせることが可能です。

妊娠糖尿病は、妊娠した時に、はじめて発症し、糖尿病にいたっていない糖代謝異常です。その他、なんらかの病気が原因で起こる二次性糖尿病もあります。すい臓や肝臓の疾患、感染症、遺伝子異常など、また薬物によっても糖尿病が引き起こされます。

糖尿病の症状

やっかいなことに、糖尿病は初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、以下に紹介する症状がある場合は、血糖値が高い状態が続いている可能性が考えられるため、すぐに病院で検査を受けることをおすすめします。

①尿の回数・量が多い
②のどが渇く
③食べているのに痩せる
④身体がだるくて、疲れやすい

①尿の回数・量が多い:
血液中のブドウ糖が高くなると、尿が多くなります。そして、血糖値が高い状態が続くと尿と一緒にブドウ糖も排泄されます。尿が泡立っていたり、甘い匂いがしたりすることもあります。

②のどが渇く:
血糖値が高いと、尿が多くなり、身体中の水分が排泄されてしまうため、のどが渇いてきます。糖尿病の代表的な症状ですので、のどの渇きが強くなってきたら疑ってみましょう。

③食べているのに痩せる:
糖尿病が進むと、インスリンの分泌が少なくなり、食事からとった糖質を、エネルギーに変えることができなくなります。そのため、脂肪やたんぱく質を分解して、エネルギーを補うようになり、どんなに食べても、痩せてしまうのです。

④身体がだるくて、疲れやすい:
インスリンが少ないと、ブドウ糖をエネルギーに変えることができないため、休んでも疲れがとれなくなります。そして、全身がだるく、何もしたくない状態になります。

これらの症状を放置すると、血液中のケトン体が増加し、糖尿病性昏睡(ケトアシドーシス)になることもあります。インスリンが不足すると、ブドウ糖がエネルギーとして使われず、脂肪が分解される時に出るケトン体が血液中に増えてしまいます。極度なインスリン不足になると、①~④の症状の後、吐き気や腹痛が起き、対処が遅れると、意識不明の状態になってしまいます。

糖尿病の合併症

糖尿病治療の目的は、生涯にわたって血糖・体重・血圧・血清脂質の良好なコントロールを続けることで、合併症を予防し、健康な人と同様に日常生活を送れるようになることです。 糖尿病の合併症は、初期から起こる可能性があります。合併症の根本的な原因は、増えすぎた血糖が、血管や神経に悪影響をあたえることにあります。糖尿病の3大合併症は、①網膜症・②腎症・③神経障害です。その他に、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、歯周病、認知症の頻度が高くなることもわかっています。

①糖尿病性網膜症:
目の網膜に障害が起こり、視力が悪くなり、失明する恐れがある病気です。進行して、失明する人は年間に4000人以上いるといわれています。眼球の奥の眼底にある網膜は、見たものを脳に伝える重要な役割をもちます。網膜にはたくさんの血管があり、高血糖が続くと、血管がもろくなり、出血したり視力低下につながったりします。

②糖尿病性腎症:
腎臓の尿をつくる機能がおとろえ、身体の老廃物を除去できなくなる病気です。腎臓にある糸球体は、細い血管のかたまりで、血液をろ過し、老廃物を尿として排泄する役割があります。高血糖が続くと、血管に障害が起こり、ろ過機能が低下し、全身にむくみが起こります。これは人工透析の導入の一番の原因とされています。

③糖尿病性神経障害:
高血糖が続くと、末梢神経に障害が起こり、手足の感覚がにぶくなったり、しびれや痛みが起こったりします。神経は全身に分布しているため、立ちくらみや発汗異常などが生じます。また重症になると、低血糖になっても気がつかなくなることもあります。

平均的にみて、高血糖状態が5年続くと糖尿病性神経障害が、10年続くと糖尿病性網膜症が、そして15年続くと糖尿病性腎症が発症すると報告されています。

まずは、主治医から糖尿病、もしくは糖尿用予備軍というお話があったら、治療をはじめることが重要です。わかった時点ですぐに治療を開始することで、糖尿病の進行や、将来起こるかもしれない合併症を防ぐことができます。糖尿病は、一度発症してしまうと、健康な時と同じ状態に戻すことはできません。治療によって血糖コントロールが良好に安定しても、治療は継続してください。

参考文献
糖尿病治療ガイド2016-2017 日本糖尿病学会 文光堂 2016 
糖尿病食事療法のための食品交換表第7版 日本糖尿病学会 文光堂 2013
図解でわかる糖尿病-血糖値を下げるおいしいレシピつき-片山隆司・貴堂明世・伊藤玲子 主婦の友社 2015
糖尿病 作って食べて学べるレシピ 西東京臨床糖尿病研究会 医学書院 2015
最新糖尿病に克つ生活読本 相磯嘉孝 主婦と生活社 2015

 

おすすめコラム
妊娠糖尿病とは?
妊娠中に注意したい魚介類の水銀①
妊娠中に注意したい食中毒①〜リステリアを知っていますか?〜
妊娠中に注意したい食中毒②〜リステリア感染の予防法〜
妊娠中に無理なく摂りたい栄養素・鉄分
妊娠中に無理なく摂りたい栄養素・葉酸①

みんなのコメント( 2

    • 小山 幸子
      2751日前

      コメントありがとうございます。
      日々の生活で、ご自身の身体の事は後回し…とういう方はたくさんいらっしゃいます。
      年に1回、健診の機会があれば実施していただくことをおすすめいたします。

    • ID: 361
      2755日前

      ①尿の回数・量が多い②のどが渇く④身体がだるくて、疲れやすい に当てはまるので怖くなってきました。一度きちんと検査してみてもいいですね。ありがとうございます。

WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

小山 幸子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"病気(症例別)と栄養"に関するコラム

もっと見る