貧血かどうかの判断は、まずヘモグロビン値を参考にしますが、ヘマトクリット値(Ht)や赤血球数(RBC)、MCVなど複数の血清データから考えます。
◆ヘモグロビン値(Hb)
WHOでは、貧血と判断するヘモグロビン濃度を以下のように定めています。
男性(15歳以上)13g/dl未満
女性(15歳以上、妊娠していない)12g/dl未満
乳幼児、妊娠中の女性、高齢者 11g/dl未満
◆ヘマトクリット値(Ht)
血液に占める赤血球の割合を示します。
<基準値>
成人男性:40~50%
成人女性:35~45%
基準値より低値の場合、貧血が疑われます。
◆赤血球数(RBC)
<基準値>
男性:400~550万/μl
女性:350~500万/μl
基準値より低値の場合、貧血が疑われます。
◆MCV(mean corpuscular volume;平均赤血球容積)
赤血球1個あたりの大きさを示します。
<基準値>
80~100fL
計算式
MCV(fL;フェムリットル)=Ht(%)÷RBC(万/μl)×1000
貧血は、「小球性」「正球性」「大球性」の3つのタイプに分けられます。その分類にはMCVの値が使われます。
80fL未満:小球性
80~100fL:正球性
100fLより多い:大球性
この分類については、次回詳しく説明します。
◆MCH(mean corpuscular hemoglobin;平均赤血球ヘモグロビン量)
赤血球1個あたりのヘモグロビン量を表します。
<基準値>
30~35pg(ピコグラム)
基準値より低値の場合、貧血が疑われます。
計算式
MCH(pg)=Hb(g/dL)÷RBC(万/μl)×1000
◆MCHC(mean corpuscular hemoglobin concentration;平均赤血球ヘモグロビン濃度)
赤血球の単位体積あたりのヘモグロビン量(濃度)を表します。
<基準値>
30~35%
基準値より低値の場合、貧血が疑われます。
計算式
MCHC(%)=Hb(g/dL)÷Ht(%)×100
※基準値は、検査機関により若干異なります。実際には、各所属機関の数値を参考にしましょう。
まとめ
貧血は、赤血球やヘモグロビンが少なくなり身体が酸素不足になることから起こります。
今回は、貧血の基本的な考え方から原因、診断の際に使われる数値についてご紹介しました。
検査数値の基準値については、検査機関、医療機関によってばらつきがありますので、実際には、所属機関の数値を参考にしてください。
次回は、貧血の分類について詳しくご紹介します。
【参考文献】
・難病情報センターHP
https://www.nanbyou.or.jp/(閲覧日:2023年7月28日)
・日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf(閲覧日:2023年7月28日)
・日内会誌 成田美和子 貧血の分類と診断の進め方
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1375/_pdf(閲覧日:2023年7月28日)
・厚生労働省 e-ヘルスネット ヘマトクリット値
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-075.html#:~:text=Ht%20%2F%20%E3%83%98%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E5%80%A4%20 (閲覧日:2023年7月28日)
・萩原 將太郎:「やさしくわかる 貧血の診かた」、株式会社金芳堂、(2020年)
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