管理栄養士として給食委託会社で勤務した後、上海中医薬大学で中医学を学び、日本で薬膳に関するセミナーや講演を行っている大倉あやこさん。薬膳に興味をもつようになったきっかけから、現在の活動を行なうにいたった経緯をおうかがいしました。
中医学の本場、中国へ留学
現地では、大学に通いながら、中医学の先生の鍼や整体の治療を受けました。また、中国では一般の人でも薬膳について詳しく、一般家庭に行って薬膳を教えてもらう機会もありました。留学してから、できるだけ体を冷やす食べ物を避けるなど食生活に気をつけるようになると、徐々に体調がよくなっていきました。留学した当初は午前中だけで疲れてしまうこともありましたが、徐々に午後も元気に動けるようになるなど、目に見えて改善が見られました。薬膳の考え方にもとづいて食生活を見直すことで、自分の虚弱体質を改善することができたんです。
私は自分が学んだことを伝えるため、学校に通いながら、上海に住んでいる日本人を対象に薬膳を教えるようになりました。ただ、その当時はまだ日本人が薬膳を教えると言っても、怪しい目で見られてしまって、最初はまったく人が集まりませんでした。管理栄養士の資格がありますと言うとようやく安心してもらえるというような状況でした。今なら、薬膳と言うだけで人が集まってくれるので、時代は変わったなと思いますね。
上海での薬膳教室は次第に生徒も増えて、口コミで話題になり、メディアにも取り上げられるようになりました。結局、大学を卒業後も5年くらいは上海で薬膳を教えていました。日本人向けの薬膳教室の他に、中国人向けに日本の栄養学を教えていました。
日本の管理栄養士に薬膳の知識を広めたい
日本に戻ってからは、管理栄養士の方を対象に薬膳を教えています。私は自身の虚弱体質を改善するために栄養学を学びましたが、それだけでは改善せず、薬膳を学ぶことで改善したという実体験があります。栄養学は食物に含まれる栄養の含有量や、検査数値からどのような栄養をどれだけ摂取すればいいかなど、数値を取り扱うことを得意としていますが、それだけでは十分ではありません。薬膳では数値として取り扱うことができない、人間の体質や性格にも着目して、食事の指導を行います。薬膳の知識は栄養学に足りない部分を補ってくれます。そうした思いから、管理栄養士のスキルアップとして、薬膳の講座を開催しています。
薬膳を学ぶ生徒さんの中には、最初は顔色が悪かったのに、講座が進んでいくごとに顔色が改善していく方がいらっしゃいます。そんな時にはやはりやりがいを感じます。また、すべての講座が終わった後に、もっと薬膳について詳しくなりたいと、自分と同じように中医学の道に進む人も増えてきました。そういった生徒さんをみると、今まで自分が進んできた道は間違っていなかったんだなと思います。
薬膳と栄養学は非常に相性がいい学問だと思います。医療の世界で薬を扱うことなく、普段の食事を改善することで、病気の悪化を防ぐ方法を教えることができるのが管理栄養士のお仕事です。薬膳はさらに一歩すすんで、予防医学をはっきりと打ち出しています。病気になったから、管理栄養士に相談するのではなく、病気にならない食生活のために相談するという考え方が世の中に広まれば、もっと管理栄養士の活躍の場は広がります。そのために、薬膳について正しい知識を持った管理栄養士を増やしていきたいと思っています。
大倉あやこさん、ありがとうございました。
前回はこちら >>管理栄養士の世界に薬膳の知識を広めたい① - 大倉あやこ