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- 病気(症例別)と栄養
- 2024.03.08
肥満症とは?肥満の定義とメカニズムを知る
「肥満」と「肥満症」は混同されがちですが、定義が異なります。そこで、今回は「肥満症」について3回に分けてご紹介します。
1回目は、定義を知り「肥満症」についての理解を高めましょう。
~肥満症の定義を知る~ 肥満と肥満症の違いとは?
肥満は、「体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態(BMI≧25)」と定義されています。
一方、肥満症は、「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする疾患」と定義されています。
つまり、肥満自体は病気を意味するものではありません。肥満に伴い健康障害を合併する状態※1などになると肥満症として診断され、医学的に減量を必要とします。また、健康障害を伴っていない場合でも、内臓脂肪型肥満(腹囲:男性85㎝以上、女性90㎝以上)は、健康障害の合併リスクが高いため、肥満症と診断されます。
※1 肥満症の診断に必要な健康障害は以下の11種類です。
1)耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)
2)脂質異常症
3)高血圧
4)高尿酸血症・痛風
5)冠動脈疾患
6)脳梗塞・一過性脳虚血発作
7)非アルコール性脂肪性肝疾患
8)月経異常・女性不妊
9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節、股関節、手指関節、変形性脊椎症)
11)肥満関連腎臓病
肥満度の分類 日本と世界は基準が違う?!
肥満度は、BMIによって6段階に分類されます。(表1を参照)
日本では、日本肥満学会が定めたBMI25以上を肥満と判定しますが、世界基準となるWHOの基準では、BMI25以上をPre-obeseと示し、肥満の判定は、BMI30以上となっています。
これは、日本人を含むアジア人は、欧米人に比べて低いBMIで上述のような肥満関連の健康障害を発症するリスクがあることから、基準が別途定められています。
例えば、肥満関連の健康障害に加え、糖尿病や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症リスクは、欧米人をBMI30以上で判定した場合とアジア人をBMI25以上で判定した場合とでほぼ同等という結果が得られています。
肥満のメカニズムについて知る
一般的に、体重増加は「摂取エネルギー>消費エネルギー」により起こります。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る例としては、食べすぎや運動不足を思い浮かべがちですが、年齢とともに基礎代謝量※2が低下しているにも関わらず、若い頃と変わらない食事を続けていると、結果的に摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることになり、生活に変化がなくても自然と体重は増加します。
※2 安静時、覚醒している状態で生命の維持に必要な最低限のエネルギー消費量のこと
また、食べすぎる要因としてはさまざまなメカニズムが考えられます。
■ストレス
仕事や家庭環境など、日常生活でのストレスが強くなると交感神経の働きが活発な状態が続きます。交感神経が優位な状態は、胃や腸の働きが抑制され消化不良や食欲不振の原因になります。逆にストレスから解放されると副交感神経が優位になり、反動で食べすぎてしまいます。大切な仕事がある日に、緊張でランチがほとんど喉を通らなかったが、終わった後はほっとして食べすぎてしまうという経験は、程度に差はあっても、多くの方が経験されているのではないでしょうか? これがストレス発散のためのやけ食い、無茶食いです。
■不規則な生活
夜勤と日勤のような交代勤務や介護や育児中など、不規則な生活が続くと食事時間も乱れてしまい、夜食や間食などで結果的に摂取エネルギーが過剰になりがちです。
また、食べたり食べなかったりを繰り返すと交感神経や副交感神経のような自律神経の乱れにもつながり、太りやすい身体になってしまいます。
■睡眠不足
睡眠時間が6時間未満の短時間睡眠では、体重が増加しやすいことがわかっています。これは、睡眠不足による強い空腹感により間食回数が増えて摂取エネルギーの増加が起こることや、体温調節の変化や疲労感増加により消費エネルギーが減少するためだと考えられています。また、食欲を調節するレプチンやグレリンの関連などが示唆されています。
まとめ
管理栄養士・栄養士は、減量指導をする際、医学的介入の必要がない肥満と医学的介入を必要とする肥満症を最初にアセスメントしなければいけません。肥満症の定義を知り、一人一人に合った支援を心がけたいですね。
参考文献
一般社団法人 日本肥満学会HP
http://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html (閲覧日:2024年1月)
肥満症診療ガイドライン2022
http://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_05.pdf (閲覧日:2024年1月)
Wataru Ogawa et al.Definition, criteria, and core concepts of guidelines for the management of obesity
disease in Japan ,Endocrine Journal
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/advpub/0/advpub_EJ23-0593/_pdf/-char/ja (閲覧日:2024年1月)
e-ヘルスネット(厚生労働省) ストレスと食生活
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-001.html (閲覧日:2024年1月)
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みんなのコメント( 1 )
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- Eatreat 編集部
- 293日前
松岡喜美子さんにご執筆いただく“疾患と食事療法、食事指導シリーズ”。糖尿病に続いて、肥満症について解説いただきます。
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WRITER
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松岡 喜美子
循環器病予防療養指導士 かがわ糖尿病療養指導士,ベーシックインストラクター(JCCA)、貯筋運動指導者、歯科栄養アドバイザー2級 大学卒業後、糖尿病クリニックでの栄養指導に従事しながら健康運動指導士を取得。 2008年よりフリーとしての活動を開始。 特定保健指導の立ち上げからスタッフ育成などにも携わり、これまでの指導件数は1万件以上。 生活習慣病予防セミナーの講師や企業やスポーツクラブでの運動指導なども行っている。 その他、企業HPのコラム執筆なども担当し、健康情報の発信や商品マーケティングなども行っている。 「栄養不良の二重負荷」という問題に対して、世界に貢献できる管理栄養士を目指しています。 ★2023年7月~ 訪問栄養指導をスタートしました。 プラダ―ウィリー症候群(PWS)の症例に関わられたご経験がある方、情報共有できたらうれしいです。
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