COLUMN

今回の旬の野菜は12月に旬の「白菜」です。

白菜の歴史・原産地

白菜はアブラナ科の1~2年草です。英語では「チャイニーズキャベツ」と呼ばれています。
原産地は中国北部になります。中国では「白菜(バイツァイ)」といい、それを日本で「はくさい」と呼ぶようになりました。また、中国の「百財」(多くの財)と発音が同じなので、中国では縁起のよい野菜とされています。
日本へは1875年(明治8年)に、勤業寮内藤新宿試験場に山東白菜が持ち込まれました。この時は、種をとることができませんでしたが、日清・日露戦争の時に出征先で白菜を味わった兵士たちの、故郷に持ち帰って栽培したいという熱意が試作生産につながりました。その後、研究が進んで明治の末に種をとることに成功し、日本の風土に定着していきました。このように白菜は比較的、新しい野菜なのです。
白菜の分布は世界的に見ても特異で、中国、韓国、東南アジアの一帯のみと言われています。

白菜の種類

白菜は、葉が上の部分まで重なり合って結球する「結球白菜」、株の基部だけ結球して上の部分の葉は結球しない「半結球白菜」、葉は重なり合っていて結球していない「不結球白菜」の3つのタイプに分けられます。一般には白菜といえば結球白菜を指します。
結球野菜は、軟白した葉をコンパクトに生産できる特長があり、他の葉野菜では難しかった貯蔵性が飛躍的に高められました。一方で、気候の影響を受けやすい難しい野菜でもあります。結球野菜は、一定の葉数が必要なため、暑さの中で布団をかぶって寝ているような状態になるからです。
花芽がついて、花茎が伸びることを「とう立ち」または「抽薹(ちゅうだい)」といいます。春の味覚の「蕗の薹(ふきのとう)」がよく知られています。とう立ちすると、本来の食べ方はできなくなりますが、「とう」の部分を利用することができます。アブラナ科の葉もの野菜の花茎は、多くの場合は、ナバナと同様に食べることができます。白菜の花茎は、東北地方では「ふくたち」の名前で親しまれています。

白菜の栄養

95%が水分で、水分が多い野菜です。カリウム、ビタミンB1、B2、葉酸、ビタミンC、ビタミンK、食物繊維をほどよく含んでいます。
アブラナ科の野菜には、グルコシノレートが含まれていて、噛んだり、すりおろしたりすると、アリルイソチオシアネートという辛味成分に変化します。この成分の一種であるスルフォラファンは、発がん物質を抑制する働きがあることから注目されています。昆布のうま味成分でもあるグルタミン酸も多く、いいだしが出る野菜の代表選手でもあります。

白菜とキムチ

キムチは、とうがらしやにんにくの効果で、低塩保存ができ、塩をして水上げしないので、水溶性成分の損失が少ないといった利点があります。韓国でキムチの作り方について、最初の記述として残っているのは1835年とされています。結球白菜が韓国に導入されたのは1920年頃と言われていて、白菜のキムチが材料の主要なものとなったのは1930年以降と考えられています。キムチの中では新しい食材なのです。

おいしい白菜の選び方

葉の先まで巻きがしっかりしていて、大きさのわりに重みがあるもの、押すと弾力があるもの、外葉の緑が濃いものがおすすめです。切り口の断面が、ひび割れや変色がなく白いもの、白い部分が二等辺三角形をしているものもいいですね。また、葉先がしおれているものであっても、霜にあたって育ったものもあるので、一概にダメなものとは決めつけられません。
カットしてあるものは、葉がつまっていて、切り口の芯が盛り上がっていないものを選ぶといいですね。盛り上がっているものは切ってから時間が経っています。
葉柄に黒い斑点があるものは控えましょう。黒い斑点は「ゴマ症」といい、斑点の正体は、白菜の生理障害によってあらわれたポリフェノールです。気温の高低があったり、肥料が多すぎたり、栽培環境のストレスが原因と言われています。これはカビや病気ではないので、食べてもまったく問題はありません。

白菜の保存方法

丸ごとの場合は、新聞紙に包んで、風通しのいい冷暗所に立てておきましょう。新聞紙が湿ってきたら、取り替えましょう。カットしたものは、切り口からの水分の蒸発を防ぐため、ラップで包んで、ポリ袋に入れて野菜室で保存します。 畑ではすぐに収穫せずに、外の葉で結球部分を包み込むようにして、ひもで縛っておくと、内側の葉もみずみずしいままで保存できます。通称「ハチマキ」と言います。

白菜の調理方法

調理方法は幅広く、漬物、煮物、おひたし、和え物、汁物、鍋物、あんかけ、炒め物などに。生のままサラダにしてもよいのですが葉と軸の部分では歯触りが違うので、分けて使うといいでしょう。火の通り方も部位によって異なるので、切り方など工夫すると、さらに調理の幅が広がります。
麻婆白菜やキョウザやパスタ、グラタン、ロール白菜にも。カレー味にも合います。そのままグリルで焼いても。

参考文献:
・『とれたて大百科』 JAグループホームページ https://life.ja-group.jp
・『七訂 食品成分表2016』 女子栄養大学出版部 2016
・『野菜の効用事典』 山口米子 大滝 緑 明治書院 2005
・『新・野菜の便利帳 おいしい編』 板木利隆 高橋書店 2016
・『野菜の仕入れ事典』 瀬戸達和 旭屋出版 2008
・『旬の野菜の栄養事典』 吉田企世子 エクスナレッジ 2016
・『野菜の作型と品種生態』 山川邦夫 農山漁村文化協会 2016
・『簡明食辞林 第2版』 樹村房 1997
・『野菜園芸大事典 第4版』 養賢堂 1988
・『趣味の園芸 やさいの時間』 2017年9月号 NHK出版 2017
・『趣味の園芸 やさいの時間』 2017年10月号 NHK出版 2017
・『趣味の園芸 やさいの時間』 2017年11月号 NHK出版 2017
・『地域食材大百科 第2巻』 農山漁村文化協会 2010

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      2155日前

      Eatreat編集部です。今回の旬の野菜はこの時期美味しい白菜です!!!

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WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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