COLUMN

今回の旬の野菜は6月に旬の「アスパラガス」です。

元々は観賞用だったアスパラガス

アスパラガスは、ユリ科のアスパラガス属の宿根多年草です。若い芽の部分を食用にしています。
ギリシャ時代には、根を煎じて薬として飲まれていたと言われています。中国でも利用しているようです。
日本には18世紀後半ごろ、オランダ人によって長崎に伝えられました。その時は「松葉うど」「西洋うど」「オランダきじかくし」などと呼ばれており、観賞用でした。アスパラガスとは、ギリシャ語で「非常に分枝する」を意味します。この属の植物は分枝が多いということなのです。
明治初期に、北海道の開拓者がアメリカから導入して、食用として栽培が始まったとされています。
アスパラガスは宿根性(地上部は枯れるが、根は生き残っていること)で、涼しい気候を好むと言われています。寒い地方では、根株がよく休眠できるので、翌年に発生が多くなり品質が良くなるそうです。

白のアスパラガスと緑のアスパラガス

アスパラガスには主に白色のアスパラガスと緑色のアスパラガスがあります。
白いものは、芽が出た時から土寄せをして、軟白栽培したものです。保存性が良くないので、缶詰やびん詰めに利用されています。緑のものは、地上に芽を出させて育てたものです。1980年代に栄養価が高いことから、栽培の主流になってきました。

よく耳にするアスパラギン酸とは?

甘みを含んだうま味成分はアスパラギン酸で、アミノ酸の一種です。アスパラガスから発見されたので、この名前がつきました。アスパラギンが加水分解されたのが、アスパラギン酸になります。
アスパラギン酸は、体内でたんぱく質の合成材料となって、アンモニアの排泄促進にも関与しています。また、カリウム、カルシウム、マグネシウムを運ぶ役割もあるので、これらの補給にも欠かせないものです。
化学的に作られたアスパラギン酸が、調味料やアミノ酸補給の強化剤(食品添加物)として許可されているので、ドリンク剤にも配合されています。

アスパラガスの栄養素

緑ものはカロテンが多く、緑黄色野菜です。その他にビタミンB1、B2、葉酸、ビタミンE、ビタミンKなどが豊富に含まれています。また、カリウムが多いのも栄養価が高いと言われる理由の一つです。
穂先には、フラボノイドの一種であるルチンが多く、毛細血管の抵抗性を増強する作用があります。フラボノイドは透過性(Permeability)にちなんで、ビタミンPと呼ばれています。この作用は、みかんの果皮に多いヘスペリジンにもあり、「P」はフラボン誘導体の総称として用いられています。

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おいしいアスパラの見分け方と保存方法

緑ものは、全体が鮮やかな緑色でまっすぐでハリがあるもの、穂先が硬くしまっているもの、茎の切り口がみずみずしいもの、はかまの形がほぼ三角形で均一に並んでいて、縦筋が目立たないものがいいです。根元にシワがあり、筋っぽいものは控えましょう。はかまは成長すると葉っぱになります。
穂先を上にして立て、湿らせたキッチンペーパーを軸に巻いて、乾燥を防ぎながら野菜室で冷蔵しましょう。水平におくと、起き上がろうとするため糖やアミノ酸が消費されて、風味が低下します。収穫してからも、光が当たると成長して、短時間で繊維質に変化するので、筋っぽくなりやすくなります。さらに苦みが出て、穂先がとろけてしまう事も。成長がはやいことから「暴れん坊野菜」という別名もある程です。1時間で1cm近く伸びることもあると言われています。新鮮なうちに加熱しましょう。数日間なら茹でて冷蔵がおすすめです。硬めに茹でて冷凍保存もできます。

アスパラの調理方法

根元の硬い部分は、折れる所で折ってもいいのですが、硬い部分の皮をピーラーでむいて無駄なく利用しましょう。三角のはかまの部分は、ていねいに仕上げたい時や、硬くて茶色になっている時は除くといいでしょう。熱湯で色よく茹でましょう。冷水にとってもいいのですが、特有の甘みや香りが消えていきます。茹でる時は、むいた皮を一緒に入れると香りが強くなります。白いものは、皮が硬い場合にはピーラーで薄くむいて利用しましょう。
おひたしや和え物は茹でてから使います。炒め物、揚げ物は生のままでいただけます。一本そのまま薄切り肉を巻き付けて、焼いたり揚げたりダイナミックに調理するのもいいですね。その時は硬い根元は切り口だけ落として、食べる時の持ち手に残しておくといいでしょう。サラダ、グラタン、天ぷら、スープ、パスタ、パン粉焼きなどに向いています。えびとアボカドを合わせて、甘くないケークサレ(フランス生まれの塩味のケーキ)にも。
また、白いものを茹でる時は、酢やレモン汁など加えると色も風味も良くなります。柔らかな口当たりや、繊細な香りを楽しみましょう。缶詰を使用する時は底から開封して、穂先を痛めないように、そっと扱いましょう。

参考文献
・『とれたて大百科』 JAグループホームページ https://life.ja-group.jp
・『七訂 食品成分表2016』 女子栄養大学出版部 2016
・『野菜の効用事典』 山口米子 大滝 緑 明治書院 2005
・『簡明食辞林 第2版』 樹村房 1997
・『新・野菜の便利帳 健康編』 名取貴光 高橋書店 2016
・『新・野菜の便利帳 おいしい編』 板木利隆 高橋書店 2016
・『野菜の仕入れ事典』 瀬戸達和 旭屋出版 2008
・『いつもの野菜まるごと百科 やさいの教室』 かんき出版 2016
・『野菜園芸大事典 第4版』 養賢堂 1988
・『原色食品図鑑 第2版』 建帛社 2008

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      2125日前

      編集部です!
      ビタミンPってなかなか聞かない言葉ですよね。
      今後もたくさん情報をお届けします!!

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WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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